巡逢~茜色の約束~
考えてるならわざわざ怒鳴られに来ねえっつの。



「……考えてないっす」



俺が答えると、担任は深い溜め息をついて──



「いつまで引きずってるつもりなんだ」



禁句を口にした。

それを言うか──仮にも教師が。



「……予鈴鳴るんで。失礼します」

「おい待て綾瀬……!」



制止も聞かずに屋上へ向かう。

追って担任が来る教室へ向かう気には、どうしてもなれなかった。





あのとき美生がいたというペントハウスに登り、ごろんと寝転ぶ。

360°広がる青い空に、目を閉じた。



「……」



朝だというのに焼け付くような日差しが、俺の眉に深い皺を刻む。



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