巡逢~茜色の約束~
真っ黒な感情が心の中を支配して、一番傷つけちゃいけないヤツ等を傷つけた。



「……ごめん」



今更何を言い訳しても、後の祭り。

今の俺に出来ることと言えば、これ以上余計なことを言ってしまわないよう、2人の前から立ち去ることくらいだった。





家に帰っても、気分はずっと沈んだままだった。

最早何がこうさせるのかもわからない。

いつの間にか降り出した雨に問うても、答えなんて返って来る筈なかった。



リビングのソファに寝転びながら目を閉じていると、玄関が開く音がした。

買い物に行った美生が帰ってきたんだろ、と、気にすることなく寝返りをうった瞬間、リビングの扉が開いて。



「……あら。久しぶりね、千速」



生で聴くのは……いや、聴くこと自体、数週間ぶりの声が耳に届いた。



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