巡逢~茜色の約束~
「母……さ……」

「中々仕事が落ち着かなくてね。明日イタリア行くから、荷物取りに来たの」



バタバタと駆け回る母さんの声が、リビングに響く。

今度はイタリア……か。



「聞いたわよー。大学行くんでしょ?」

「……え」

「担任の先生がわざわざ連絡して教えてくれたのよ。進路はそれでいいですかって」

「……」

「手続きとかはちゃんと済ませておくから、必要な書類とかあったら連絡して」



キャリーバッグに必要なものを詰め終えた母さんは、足早に部屋を出て行こうとする。



「待てよ」



俺、どうしてそんなことを言ったんだろう。

考えるよりも先に、言葉が口を衝いて出たんだ。



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