巡逢~茜色の約束~
「何?」

「なんで……何も言わねえの?」



俺の問いかけに、母さんは眉をひそめる。



「……どういうこと?」

「いくら家に帰ってこないからって、今のこの家に疑問を持たない筈ねえだろ」



明らかに生活感が増した部屋。

フェミニンな小物なんかは、普通に考えれば高校生男子が選ぶようなものじゃない。



「……誰かこの家に出入りでもしてるの、そう聞いてほしかったの?」

「別に、聞いてほしいとかじゃ……」

「じゃあわざわざ引き留めないで頂戴。私が一分一秒の世界を生きてること、知ってるでしょ?」



……なんで忘れてたんだろう。

親なんてこんなもんだったろ。

昔から……ずっと。



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