巡逢~茜色の約束~
「ポトフに入れたロールキャベツも、沢山作って冷凍室に入れてあるの。千速くんなら、簡単に調理出来ると思うから」

「……」

「この前作ったリンゴジュースもね、結構巧く出来たから、後で作ろうかなって思ってて」

「……」

「だからね……」



机の前に立ち尽くしたままの俺は、いつもより饒舌な美生の言葉をただ聞く他なくて。

だから、



「……ねぇ、千速くん」

「……」

「なんで何も言ってくれないの……?」



俯いたままの美生が苦しそうに絞り出した言葉に、望む答えを見出すことなんて出来る筈もなかったんだ。



「……行くな」



現状を変えるものとして、自分でもこれが正しいとは思わない。



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