巡逢~茜色の約束~
美生はこのまま、穏やかに別れの瞬間を迎えることを望んでるんだろう。

明後日から、美生がいない日々を俺が平然と送ることを。



「……じゃあ、朝でお別れだな」

「……え?」

「ここで笑って送り出せる程、俺……強くねえからさ」



この家を出て行く美生を引き留めないでいられる自信が持てない。

さっきみたいな言葉を投げ掛けて縋ってしまうだろうから、俺の為にも、美生の為にも、きっと俺はその場所にいない方がいい。



「明日は晴れるって。大阪まで結構あるだろうし、雨じゃなくてよかった」

「……うん、そうだね」



胸につっかえたあの写真の謎を問う機会なんてないまま、今日が終わる。

そして迎える朝は──



< 317 / 374 >

この作品をシェア

pagetop