巡逢~茜色の約束~
「……そろそろ行かねえと」



美生が作ってくれたスクランブルエッグを平らげ、制服のネクタイを手際よく結ぶ。

ちらりと見た窓の外から射す光が、いつもより眩しい気がした。



「じゃあ俺……もう行くな。鍵はポストにでも入れといて」

「……うん」



ぐっと唇を噛み締めて、口走ってしまいそうになる言葉を全て飲み込んだ。



「……じゃ」



鞄を背負い、リビングを後にする。

ボロボロに磨り減ったローファーを履いて玄関を出ようとした刹那、



「──千速くん!」



愛しい声が紡いだ、俺の名前。

振り返ろうとしたのとほぼ同時に、背中にぬくもりを感じた。



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