巡逢~茜色の約束~
「み、お……?」



あまりに突然のことに身動きが取れないでいる俺の腰に回された腕が、力を増した。



「私……っ、千速くんに出会えてほんとによかった……。この1ヶ月と少しが、今までで一番楽しかった……!」

「……っ」

「千速くん、お願い……。例え私がいなくても、どんなに苦しいことがあっても、千速くんは独りじゃないから。だから絶対、幸せでいて……!」



後ろから抱き締められていて顔を見ることは出来ないけど、美生が泣いていることは安易に予想出来た。

思い返せば、美生が流す涙は最初から最後まで、全部俺の為のものだった。



「……うん、ありがとう。じゃあな」



美生の手をそっと解いて、家を出る。

いつもの道を少し歩いて空を見上げると、悲しいくらいに澄んだ青が広がっていて。



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