巡逢~茜色の約束~
「……っ」



我慢していた涙が、次々と溢れ出す。



「っうぁ……」



立ってられなくてその場にしゃがみ込んだ俺を、通りすがりの人が怪訝な顔をして見ているのには気付いていた。

それでも、そんなことを気にしてる余裕なんてない程、胸がいっぱいで、はち切れそう。



「あぁ……っ」



美生は最後の最後まで真っ直ぐで、まっさらだった。

そんな美生はいつだって眩しくて、愛おしくて……さよならなんて、したくなかったのに。



「幸せってなんだよ……っ」



独りじゃないって、なんなんだよ。

独りだよ。

幸せじゃないよ。

美生がいないなら、美生の願いなんて叶えられない。



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