巡逢~茜色の約束~
自分の粗探しをしては、今とは違う“イマ”を想像して。



「……情けな」



思わずこぼれてしまった言葉は、秋風に乗って消えていった。



目を閉じて、空が茜色に染まる放課後の屋上で、美生と出会ったときのことを思い出す。

口癖のようになっていた“死にたい”という言葉を、ペントハウスの上にいた美生に聞かれたんだっけ。

“随分と悲しいこと言うんだね”……そう言って、美生は俺の元に舞い降りた。

初めは、怪しさだらけの美生に質問攻めしたっけ。



思えば俺達のこの1ヶ月と少しは、偶然から始まってたんだなぁ。

美生が家出しなかったら。

選んだのが、おばあさんの地元でなかったら。



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