巡逢~茜色の約束~
「お待たせ」

「私も今来たとこだよ。やっぱりちょっと迷っちゃって」

「あれだけ説明したのに」



言いつつ、学校からすぐの道を並んで歩く。

と、居合わせたクラスメートや同級生の視線が集まっているのを感じた。

美生もそれを悟ったようで、



「なんかジロジロ見られてるね」

「あぁ、珍しいんだろ」

「何が?」

「俺が誰かといるのが」



俺が何気なしにそう言うと、美生は少し複雑そうな顔をした。



「……千速くんは、さ」

「うん?」

「最近、楽しいって心から思ったこと……ある?」



なんで。

なんで自分から聞いといて……お前が苦しそうな顔するんだよ。

そんな顔されちゃ、被害者面なんか出来ねえじゃん。



「ないよ。もう何年も、楽しさなんて感じてない」



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