巡逢~茜色の約束~
この辺から全部が崩れ始めて、無関係な桜井達に当たり散らして……俺はまた独りになった。

俺は結局、惚れた女がいなけりゃ何も出来ない弱くて情けない男のままだったんだ。



「……これから、どうすっかなぁ」



自嘲気味な笑みを浮かべた刹那、ポケットの中のケータイが震えた。

目を開けて取り出してみると、画面には学校の名前が表示されている。



……俺がサボってばっかだったから、ケータイ番号教えさせられたんだっけ。



「……もしもし」

『あ、綾瀬か?俺だ』

「……なんすか」



頭をがしがしと搔きながら体を起こす。



『お前の家、学校からすぐそこだったよな?』

「……まぁ」

『どうしても今日中に渡しておかないといけない書類があったのを忘れてたんだ。申し訳ないんだが、今から来てくれないか?』



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