巡逢~茜色の約束~
「……はい」



担任に一礼して、職員室を出た。

鞄を背負い、手にしたプリントに書かれた大学名を一通り眺めてみる。



「……こことか近いし、楽そうだな」



惹かれる学科は何一つないけれど。



「……帰って調べてみるか」



プリントを折りたたみ、封筒と共に鞄に突っ込む。

そのまま階段を降りて一階の渡り廊下を歩いていると、



「……あ」



水道で顔を洗っていたらしい相川が顔を上げ、ばっちりと目が合ってしまった。

ここで無視するのは……気が引けた。



「……よ」

「……おう。帰ったんじゃなかったの?」

「担任からの呼び出しで戻ってきたんだ」



あぁ……ぎこちない。

まぁ、原因は全部俺にあるんだけど。



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