巡逢~茜色の約束~
「……忙しいのに、来てくれてありがとう」



スーツ姿の父さんと着物姿の母さんに花を差し出し、感謝の言葉を口にした。

2人を相手に素直に自分の気持ちを言えるようになったのも、多分結婚が決まってからだったと思う。

まだぎこちないけど、少しだけ歩み寄ることが出来た。



「……似合うな、タキシード」

「そりゃ……母さんがデザインしてくれたからな」

「貴女のその髪も素敵ね」

「お義父さんがやってくださいましたから」



少し前からは考えもつかない程、穏やかな空気がこの場に流れている。



2人に結婚を伝えても、祝福なんてされないと思ってた。

今までみたいに段取りだけを進めるんじゃないかって。

でも、違った。

忙しいことは変わらないのに、ドレスやタキシードのデザインを考えるために打ち合わせをしたり、会場を調べてくれたり。



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