巡逢~茜色の約束~
『学生時代、共通の友人を交えて温泉旅行に行ったことがあるのですが、そのときのお2人の息がぴったりで、まるで夫婦みたいだなぁ、と友人と口を揃えて言ったのをよく覚えています』

「あはは、そんなこともあったねぇ」

『お2人が晴れて本物の夫婦になると報せを受けたときには、嬉しさあまり涙ぐんでしまいました』



プロポーズのときも色々相談に乗ってもらってたから、一番に報せたんだっけ。

そのときの桜井の喜びようったら。



『6年もの長い時間を共に刻んできたお2人ですが、これから更に、かけがえのない思い出が増えていくことでしょう。お2人の共通の友人として、幸せなこの時間を共有出来たことを、心から嬉しく思います』

「……」

『千速くん、栞菜さん。お2人に出会えて、本当によかったです。ありがとう』



鼻をすする小さな音が隣から聞こえてくる。

実は俺も、歯をくいしばって懸命に涙を堪えていた。



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