巡逢~茜色の約束~
仕事で忙しい……か。

それはうちも同じだけど、傍にいてくれる人は俺にはいなかったな……。



「お待たせ!」



言いつつ、美生が青梗菜のおひたしをテーブルに置く。

それを合図に席に着き、手を合わせた。



「いただきます!」

「いただきます」



朝ご飯だった筈の昼ご飯を食べながら、美生の視線がテレビに向いていることに気付く。

テレビでは、大御所芸能人が若手芸人を弄って笑いをとっていた。



「……」

「……」



静かな部屋では、テレビの音がやけに大きく聞こえる。

笑うでもなく顔を顰めるでもなく、ただ真っ直ぐにテレビを見つめる美生が何を考えてるのかなんてわかる筈もない。

わかる必要もないんだろう。



「……」

「……」



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