巡逢~茜色の約束~
綺麗ごとも何もなく、空っぽになって映画の世界に浸れる、そんな場面。

ただぼうっと観るだけで、自分が世界の何者でもないような気がして、ほっとする。

1人は、無駄なことを嫌でも思い出してしまうから。



こんなの言ったってきっと理解されない、それを承知の上で口にした。

当たり前に疑問の声が返ってくるんだと、そう思ったのに、



「千速くんの世界観は綺麗だね」



なんて、そんな言葉が聞こえたんだ。

思わず、え、と声を漏らすと、美生は柔らかく微笑んで。



「映画を見てどう思うかなんて、人それぞれじゃない?おもしろいだとか、感動しただとか、十人十色」

「そうだな」

「でも結局はみんな、その映画に対しての率直な意見なの。ホラー映画観たら、怖かった、ってね。だけど千速くんは、違った。その先のことを言ってる」

「……よくわからない」



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