巡逢~茜色の約束~
俺がそう言うと、美生は眉を下げて笑う。



「思うだけじゃなくて、そこから得ることが大切でしょ。落ち着くって、そう思える千速くんの世界は、何だかとても綺麗な気がする」



そんなの……誰にも言われたことねえよ。

なんでそんな真っ直ぐなんだ。

疑うことを知らず、ただ純粋に俺を見つめる、澄んだ瞳。



人の心を読み取る機能なんて生憎持ち合わせていないから、何が本当か嘘かなんてわかる筈もないけれど、もしかしたら──もしかしたら美生は、今まで接してきたヤツ等とは違うのかもって。

そう思ったら、勝手に口が開いていた。



「俺、──」



続く言葉が飛び出す──その瞬間、



──ガチャッ……

玄関の鍵が開いた音がした。



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