巡逢~茜色の約束~
「千速くん……?」



途端に凍りつく、俺の表情。

そんな俺はお構いなしに徐々に近付く足音。

それが止まったのと同時に、リビングの扉が開いた。



「……いたのか、千速」



大嫌いな声が低音で部屋に響く。

ゆっくり振り向くと、最後に会ったのがいつなのかさえわからないような父親が、ドアの近くに立っていた。



「……悪いかよ」



ふいっと顔を逸らすと、美生が不安そうに俺を見ていた。



そりゃそうだ。

俺達の間に流れるのは、どう考えたって親子の空気じゃない。



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