好きになんてなるわけねーだろ!!!
『…数学。忘れた。』
光輝の席まで行ってポツリと呟く。
すると、光輝は気まずそうだった表情から一変、驚きの表情へと変わった。
「は?」
その声が、あまりにもいつも通りで。
当然のことかもしれないけど、それがすごく嬉しくて。
なんでだろう、泣きそうになってしまった。
私は、スッと下を向いて、続ける。
『…数学!!忘れたの。』
「へえ…で?どうしたいの?」
聞こえてくる口調から、光輝が嫌な笑みを浮かべていることは容易に想像できた。
『…っ、だから…!!』
ムカついた私は、思いっきり顔をあげて睨みを効かせる。
光輝は、全く気にしない様子で、にやにやしていた。
「だから、なに?」
ーーむっかつく…!!
私は、光輝がひらひらとさせる数学の教科書を奪い取る。
その間も、そのあとも、終始光輝はむかつく笑みを浮かべていて。
そのほんの少しの時間だけで、モヤモヤしていた気持ちはぱーっと晴れ、私の口角も自然と上がっていた。