好きになんてなるわけねーだろ!!!


『どうしたの、裕太。入らないの?』


そう言ってキッチンに戻る。

すると、裕太のつぶやく声が聞こえた。


「杏奈ってさ。やっぱ光輝のこと好きでしょ。」


驚いて振り返る。

だって、それまで裕太は私の恋愛観に口を挟んだことはなかった。


『はは、なんでよ?こんなの毎年の事でしょ?』


笑い飛ばすようにして言うとまた不満そうに口をとがらせた。


「だって。俺、弟なのに。光輝ばっかだもん。」

『何言ってんの。とりあえず中入りなよ!』


私の先導にはついてくるものの、機嫌は直さないみたいで。

リビングでソファに座る裕太をキッチンから確認しつつ声をかけた。


『なんで拗ねてんの?』


ティラミスの仕上げに手を付けていく。

ココアパウダーはかけたてで見た目がいいまま出したいしね。


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