好きになんてなるわけねーだろ!!!
「杏奈。おかえり言ってくれなかったし。」
ぼそぼそと言った言葉に私は手を止めた。
けど、それと同時に口元が緩む。
仕上がった1つ目のティラミスを持って裕太のもとへと行った。
キッチンに背を向けるようにしてソファに座る裕太の頭をポンと軽く叩く。
『ごめんね。今年は、1番に裕太にあげる。』
そう言って、裕太の隣に座ってティライスを手渡した。
『ハッピーバレンタイン!』
にこやかに言うと、裕太は恥ずかしそうに目をそらした。
そして、裕太にとっても毎年恒例になっているティラミスを手に取って食べる。
『美味し?』
「うん、うまい。」
無言で、もぐもぐと食べ続ける裕太に、私はまた口元を緩ませた。
だって、今日は裕太がひねくれてなくて、なんか可愛いんだもん!
「…んだよ。」
視線がうるさすぎたのか、裕太が横目でちらっと見て呟いた。
『んー?可愛いなって思って。』
にやにやしながら言うと、また裕太は顔を赤らめる。
「んだよそれ!」
『まーまー怒んなよ!』
しばらく姉弟の時間を堪能しているとふと裕太の鞄に目がいった。