好きになんてなるわけねーだろ!!!
耳をふさぐようにして座り込む俺を見て、慶太は立ち上がった。
「悪いな、帰るわ。」
その言葉に反応もしない俺。
「あ。最後に。」
そう呟くから、俺は耳から手を放した。
「永沢さんから伝言。『これ以上楠木を泣かすな』だって。」
慶太はかばんから取り出したクッキーを俺に投げると、馬鹿でかい声で母さんたちに挨拶をして帰って行った。
杏奈が、泣いてた?
なんで?
誰かになんかされたのか?
また、昔みたいに俺と仲がいいから?
や、でも、今俺は、他のやつとも付き合ってるわけだし。
一気に騒ぎ出した脳内に、はっとする。
いや、でも、俺はただの幼馴染だから。
『永沢さんに会ったら、泣いてたら慰めてやってくださいって言おう。』
や、そんなことも俺が口出しする必要ねーのか。
いろいろ考えてながら、左手を見ると、さっきキャッチした慶太のクッキーがぐしゃぐしゃに潰れていた。