好きになんてなるわけねーだろ!!!
『……う、騙された……。ケーキ…。』
大袈裟に落ち込む私。
葵は、それを見て遠慮がちに口を開いた。
「そんなに食べたかったの?私が奢ろっか?」
私は慌てて顔を上げ、左右に大きく振った。
『いいって!葵は気にしないで!』
そう笑顔で言いきって、次の授業へと向かった。
…科学の教科書、早めに返してもらわなきゃ。
そんなことを思いながら授業を受けたけど、今日の英語は半分遊びのような授業で。
楽しんでいた私は、授業が終わる頃には教科書を貸していたことなんて忘れていた。
そして、なにも考えないまま、英語の次の科学の授業が始まる。
「…ねぇ、杏奈。教科書返してもらった?」
『…………あ。』
そのとき初めて思い出した私は、苦笑する。
『…あいつ、あとで覚えとけよ…』
「…あー、えと。杏奈。私の見せてあげる。」
教科書がないことが先生にバレないように受ける授業は、ひやひやするものだった。