好きになんてなるわけねーだろ!!!
『にしてもムカつく。教科書ないのバレないようにするの必死だったんだから。』
昼食用に買ってきたらしいジュースのストローをくわえながら愚痴り始めた。
罪悪感に襲われた俺は、弁当の卵焼きをフォークに刺す。
俺の母さんが作る卵焼きは、杏奈のお気に入りだったはず。
「……食う?」
卵焼きの刺さったフォークを差し出すと、杏奈は拗ねた顔のまま俺と卵焼きを交互に見た。
………さすがに、これじゃ機嫌直さねーよな。
俺が、フォークを戻そうとすると、杏奈はその手を掴んで止めた。
驚いた俺は、杏奈を見る。
杏奈は、そのまま俺の手を動かして卵焼きを口に頬張った。
「…やっぱ、光輝ママの卵焼き美味しい…!!」
どうやら、機嫌を直してくれたらしい。
ひと安心、だな。