明日はアシタの風が吹く!【最終話】
お前はそこまでアホなのか!?

顔のトコロまで口の中に入ったとき、犬の前足がつかえてなかなか奥へ入らなくなってしまった。

「頑張れ~!! 3・3・7ビョ~シッ。そぉれっ!!」

そこで先代は「ピッピッピィ」とか言いながら応援団気取りで3・3・7拍子を取り始めた。

もういいよ、好きにやってくれ。

と思ったが3・3・7拍子に合わせて倒れていた連中が起き上がりだしたからたまらない。

その様、まるでゾンビ。

何だよ何だよ何なんだよ。

ふらふらと立ち上がったゾンビたちは、モヤシ女を応援するのかと思いきや、頭上で3・3・7拍子を打ちながら、列をつくって歩いていく。

どこ行くんだよ?!

異様な光景を現実のものとは認められなかったが、奴らについていってみることにした。

うわスゲェな、地下なんかあるんだ。

キョロキョロしながら前に進むと、硝子張りサウナみたいなのがある部屋に出た。

サウナっていうか、ビン?

よく分からないが、モヤシ男はビンだかサウナだかについているガラス扉を持ってボーッとした顔のまま立っている。

「何がどうなってるんですか?」

声を掛けたのに“妻の恋人になんか教えてや~らない”といった風もなく、ただ無視された。

くそぅ、数少ない組員に嫌われてしまった……

ぞろぞろ集まってくるゾンビがみなサウナの中に入ってうずくまると、モヤシ男は自らも中に入って内側から戸を閉ざす。

「来てくれ、来てくれぇモカヒ~ン!!」

アンパンマ~ンと助けを呼ぶような先代の声が耳に届き、俺は慌てて走り出す。

「早く! 早く!! 出産が始まるぅっ」

しゅっ出産っ?

そりゃ大変だ……って違~うっ!

誰が何で出産なんだよ? 妊婦なんかいたか?


元の部屋に戻るとモヤシ女がウンウン言いながら苦しそうに横たわっていた。

「ヒンヒンフ~ゥだ、分かったか?」

モヤシ女の傍らで息づかいを教え込む先代、何かそれ違うけど……

「ヒンヒンフ~ゥ、ヒンヒンフ~ゥ」

健気に頑張るモヤシ女。

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