女子やってます
千聖side
「千聖ちゃん!」
後ろから声がする…
やめて、今は誰とも話したくないの。
「千聖ちゃん、待って!」
いきなり誰かに手首を掴まれ、
温かいものに包まれた。
「千聖ちゃん…大丈夫?」
「あず、ま…さん?」
この声は吾妻さんのものだ。
あたしは吾妻さんに抱きしめられているんだ、と客観的になった。
「なんで…」
なんでこんなところに?
言いたくても上手く言えなかった。
なんだか涙が出そうだったから。
「騒ぎを聞きつけて行ったら…千聖ちゃんがいたから」
そんなに大事になってたのか…。
「何があったかはわからない。
でもほら。胸貸してやるからさ、思う存分泣けよ。顔は誰にも見られないから今は泣け」
その言葉を聞いた瞬間、ボロボロと涙が出てきた。
香苗を傷付けたあたし。
どうしようもなく自分が憎かった。
数分後、あたしは涙をしまって
「もう大丈夫です。ありがとうございました」と吾妻さんの胸から出ようとした。