ツンデレ専務と恋人協定
「二人とも頭を上げなさい」


やっぱり専務も私と一緒に頭を下げてくれていたんだ。

それを知ると一気に心強い気持ちになった。


頭を上げると、一瞬だけ専務と視線がぶつかったけど会長の声が聞こえ、視線は会長へと向けた。


「李人が私に頭を下げたのは初めてね。これもあなたの影響かしら?」


私の影響かどうかはわからないけど、私と専務が頭を下げたなんてこと今まで一度も知らない。


「里田さん…」

「はい」


少しの間が長く感じて緊張が走る。


「お金を全額返済できたらその時考えます。それまであなたたち二人が会うことは認めます。だけど、同棲は許しません」

「はい。ありがとうございます」


まさか、専務と一緒にいることをこんなに早く許してもらえるとは思ってなくて、会長の決断を有り難く思う。

でも、その私の気持ちとは裏腹に前に座る専務は気に食わないらしい。



「俺たちは同棲したいんだよ!」

専務はそう言って、イライラしているのが伝わってくる。

私も同棲したいと思っているけど、会長が私たちが嘘をついたことも私の借金のことも受け入れて寛大な決断をして下さったってわかる。


「同棲は許しません。いいわね?」

「許してもらえなくても勝手にする」


私の前で専務と会長の争いが始まった。

間に入ることなんてできずに最初は黙って聞いていたけど、自分のせいで二人が言い争っているのは耐えられない。

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