ツンデレ専務と恋人協定
帰り道を歩きながら、専務へと電話をかける。


『はい』


何度目かの呼び出しのあと、専務の声が聞こえてきた。


「もしもし、専務?」

『どうした?なんかあったか?』


優しくそう聞かれただけで、涙が出そうになる。

「……専務」

『今どこだ?』

「お姉ちゃんの家の帰り道です」

『マンションまですぐ行くから』


そう言って、慌ただしく電話を切ってしまった。

マンションに着いた私は、中には入らず専務が来てくれるのを外でまっていると、言っていた通りすぐに専務は来てくれた。

来るなりマンションの前で私を抱きしめてくれる。


「中入りますか?」

「いや、また会社に戻らねぇとなんねぇから」

「え?ごめんなさい」


専務が忙しいのはわかっていたのに、仕事の邪魔をしてしまった。


「謝る必要ねぇだろ。俺が急に会いたくなったんだから」


専務の優しい言葉に、離れたばかりの専務の胸に自分から抱きついた。

専務はそんな私に腕を回して頭を優しく撫でてくれる。


「どうした?姉ちゃんと喧嘩でもしたか?」


専務の腕の中で違うと首を振る。

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