ツンデレ専務と恋人協定
夜景にシャンパン、そして映画に出てきそうなこの部屋。


「なんだか夢みたい」

「すぐ帰りたがりやがって、ヤられるとでも思ったか」

「え?」


思ったけど、思ったなんて言えないよ。

専務はこの夜景を見せてくれようとしただけなのに、私だけが変に意識したなんて。


「ヤってほしけりゃヤってやるけど」

「えぇ?」

「冗談だよ。キスより先は無理やりはしねぇよ」


え?

――ガシャン。


手に持っていたシャンパングラスを、専務にキスされた拍子に落としてしまった。

すごい音がしたけど、専務は聞こえないかのように私の唇を離そうとはしない。


駄目だ…。
抵抗しなきゃいけないのに頭がしびれて抵抗できない。

専務の腕を掴むなんて、私どうしちゃったんだろう?

長い長いキスがやっと終わり私は思わず専務の視線を反らしてしまった。


「何やってんだよ?グラス割れちまったじゃねぇか」

「すみません」

「動くな。怪我ねぇか?」

動こうとした私に専務はそう言い、私を抱き抱えた。

「ちょっと、専務」

「黙ってろ」


専務は私を抱き抱えて椅子へと座らせてくれた。



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