夢幻泡影
全身びしょぬれの瑛を部屋へ連れて行く

永倉がお千を呼びにいく





お千が瑛を寝間着に着替えさせる






「何があったかしらんけんど、幹部さんはうたがったらいかん!!信じなさいよ!!」



「わかった?」



「返事は?」




「教えたやろ?」



「返事して!?」



お千は、必死に瑛に呼びかけたが


人形のように何も反応がなかった



「あんさん、つらいんやったら…うちもつらい……うっく……うっ……」


お千が泣く



瑛を抱きしめ、泣く



『死にたい……皆を汚してしまう』




瑛の目には、お千の涙が赤く見えた




『あたしのせいで… お千さんが……』




「・・・・・・」
〝ごめんなさい〟 と言った


「 何言うてるん?」

瑛はお千の手を離して

ふらふらと部屋を出る

「あんさん…どこいくのん?」


お千の呼び止めにも反応なく

やって来たのは、土方の部屋

襖を開けると

幹部が勢ぞろいしていた


へなへなと座り込み


どこを見ているかわからないような目で


「・・・・・・」

〝ごめんなさい〟 と言った。


声に出ていなかったが、その場にいた幹部全員にその言葉がわかった


「そんな言葉は聞きたくねぇよ。」


土方が言う


沖「私も…」

永「俺も」


皆が言う


近「おいで…」


瑛は横に振る


近「来てくれ!」


近藤がとてもつらそうな顔をしたから

瑛は立ち上がりふらふらと近藤のところへ

瑛を捕まえると近藤は瑛を横向きに膝にのせ、抱きかかえる


「怖い思いをさせたね。すまない。」



優しく瑛を抱きしめた



『死にたい…こんなに優しい人たちを汚してしまうなんて… ごめんなさい。』



瑛の目から、涙が流れた




!!!!!!




幹部全員が目を見開く





声もあげず、ただ流れるだけの涙


瑛の心は影に沈んだ






幹部全員「守ってやれなかった」と悔やんだ

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