夢幻泡影
その日から、女中仕事をしっかりと一日中するようになった


日に日に痩せる瑛を見て


休めと言っても聞かず


皆が心配した


お千が近藤に呼ばれた


「お千さん。申し訳ない。少しの間、住み込みしてもらえないかい?」


「へえ。かまいません。」


「ありがとう!!助かるよ!このままでは、あの子が倒れてしまう。」


「うふふっ。近藤さんは、お父上のようです!」


「はっはっはっ!!ならば、お千さんは、お母上だな!」


「可愛い娘の為、頑張りましょう!ふふっ」








お千が住み込みになってすぐ、皆が思っていた通り、瑛が倒れた


布団の中で、人形のように動くこともなく、食事も食べなくなった


『働かなくては……』


心は焦るが体は、まったくいうことをきかない


いつものように、皆が励ましに来る度

胸が締め付けられた


『すてないで……』


人の優しさをしり、人に感謝される喜び、愛されることを知ってしまった

働かなくては…追い出されると思い込んだ



「ゆっくりな!焦らんと元気になり!あんさんがいつか笑ったり、怒ったりできるようになる事が、新選組への恩返しになる!働かなくても、あんさんが元気ならええんよ!」





『わらう? おこる? はたらかなくていい?』





お千の言葉を頭の中で繰り返す

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