夢幻泡影
その日から、瑛と鏡との戦いが始まった


『気持ち悪い……』


口元がひくひく動いているだけでまったくの無表情

自分で見ても気持ち悪い表情だった

暇があれば戦った



まったく笑えないまま、半月経過した



『笑えない……』




肩を落とす




『子供の頃は、何も考えなくても笑えたのに……もう、笑えないのかも。』




両手を見る




『手についた血はすっかり綺麗になった!皆のおかげ!恩返しの為にも笑いたい!』


鏡に写る自分をみて


「・・・・」
〝がんばれ〟

励ました







「瑛。少しいいかな?」


廊下から、藤堂の声がする

瑛が襖を開けると、藤堂が俯いていた


『何かあったのかな?』


中へどうぞと手を出すが

「いや。ちょっと着いてきてくれない?」

頷く


藤堂に連れて来られたのは、藤堂の部屋


「あのさー。……」

『どうしたのかな?』

「これ!!」

首を傾げる

藤堂の手には、可愛らしい風車


『かわいい!!』

「瑛にあげる!!」

首を傾げる 『どうしてあたしに?』


「瑛、あんまり食べれないから、団子とか無理だろ?簪はお千さんからのがあるし、考えたんだ!
風車だったら、ふーふー吹いてるうちに喋る力がつくんじやないかなって!!」


緊張やら照れるやら、藤堂はガーっと喋る


『藤堂さん…あたしのために……?』


「いらない?」


首を横に振る

勢い良すぎて、少しふらつく


「わわわっ!しっかり!!」


「・・・・・・・・・・」
〝ありがとうございます〟


「////いいよ!瑛とお話できるようになりたいなぁって俺が勝手におもったんだ!!」


『あたしと……?
藤堂さん……変わり者?』



新選組に救われて一月経つ

瑛の思考回路はずいぶん回復した

しかし…生まれ持っての鈍感なのか

藤堂の気持ちには気づかない




『声のこと心配してくれてるんだな!
きっと、そうだ!!
笑う練習の他に、喋る練習もしよう!』


藤堂から風車を受け取る


ふー ふー


『なるほど!!これいいかも!!』


にこっ



「/////////」


『ん?藤堂さん?風邪ですか?』

首を傾げる


「瑛!!!!笑うと、とってもかわいい!! いや!いつもかわいいよ!!
//////// 」

藤堂は言って恥ずかしがる


それに気づかず『笑った?』


顔を触るが、『わからない』

わかるはずもない




その後、自室に戻り鏡と戦うが一度も笑えなかった

藤堂から、瑛が笑ったと聞いた皆が瑛の部屋に押し寄せて来たことは、言うまでもない




『お千さん…
あたしが元気だと皆が喜ぶんだね?
お千さんの言ってた通り!

ねぇ。お千さん…あたし笑ったらしいよ? 』




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