夢幻泡影
しばらくして 「失礼するよ!」
優しそうな眼鏡のこれまた美丈夫が来た
「土方くんから、喋れないって聞いたんだけど、どうなんだい?」
それ以上なにも聞かずニコニコと瑛を見る
「ああ!! 山南 敬助といいます!!」
『優しそうな顔して、人を売るんだ…』
瑛が少し首を傾げたことが、山南には嬉しかったらしく、満面の笑み
「お腹空いてないかい?」
山南がきいてくるが
瑛は少しあいた襖から、外の景色を見る
布団から、ふらりと立ち上がって襖を開ける
ふらふらしているから、転けないように山南が少し後ろをついて行く
外は雪だった…
瑛は裸足のまま庭に降りた
山南もそのまま降りた
瑛が空を見上げる
顔に雪が当たっては、溶ける
手を前に出す
『久しぶり…』
体を動かし、見たいものをみた
自由になれた気がしていた
廊下から、近藤、土方、沖田、永倉が見守っていた
フラッ
倒れる瑛を山南が受け止め、横抱きにして
「足拭きもってきて。」
瑛を抱いたまま、廊下に腰を下ろす
「かわいい妹ができたようだよ!」
嬉しそうな山南に土方が困り顔
「んで? なんか喋ったのか?」
「焦ることないさ、これからゆっくり癒してあげないと!」
「しっかし、綺麗な顔してんなぁ。」
「うん。昨日は、直視出来ませんでしたもんね!」
「つらい思いをしたんだな…」
「うわっ近藤さん!泣くな!!」