夢幻泡影
勢いで屯所を出た瑛は…行く宛てがあるはずもなく、屋根上に上がっていた


「ここにおったんかい!」

「山崎さん…」


土方の指示で、探しに来たのだ


「先日、買い物の途中でね、あの屋敷にいたときにきいた声がして。
後をつけたら、この旅籠に入って行ってね…それで…あたし…」

旅籠を指さし、話す


本当は、土方に話すはずだった

春嶽が現れたことで瑛は動揺したいた

山崎は、背中をさすり黙って話をきいた



「あたしはね…春嶽に売られたの。
それで…あたしを買った人が吉田 稔麿という長州の人だってわかったの…
長州は新選組の敵なんでしょう?
春嶽が長州とつながっていたことも、どうしたらいいのか…」


「なんや、難しいことを一人で悩んどったんやな…瑛は長州に買われたかて、大事にされんかったから、新選組におりたいんやろ?」

「うん!」


「せやったら、敵ちゃう。仲間や!
松平様は、長州とつながってへんはずやし、俺が調べてみるわ!」


「山崎さん…あたし…捨てられないかな?」


「阿呆やな。帰ろか?」


頷きかけた瑛の耳に


「吉田さんから届け物だ」


山崎も気づいた

旅籠の中へ入る侍

山崎と瑛は目を合わせて

旅籠の屋根裏へ忍び込む


旅籠の一部屋から聞こえる話し声

届け物とは手紙らしい


無用心に、手紙を置いて侍が部屋を出た

瑛がサッと降り、手紙をとり屋根裏へ


二人は外へ抜け


「瑛!ようやった!屯所に戻ろか!」

「うん!」

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