夢幻泡影
瑛は、自分の状況を把握出来ずにいた
布団に入り天井を見る
『どうして、助けにきたの?』
『売るから?』
『元気にならないと売れないから?』
『このまま食べなければ、死ねる?』
この部屋に一人の時は、見張られている
逃げる気力なんてない
昨日、庭に出るのがやっとのことだった
あの屋敷と同じ
縛られ、暴力などはないが、閉じ込められている…
この生活がこの先も続く
「・・・・」
口を動かすが声はでなかった
『死にたい』そう言おうとした
…天井の人が何処かへ
『また土方さんがくるのか』
ダダダダダダ… スパッン!
『うるさい』
「おい!!! どうした?なんだ?」
『なんなの?こっちが聞きたいって!飛んでくることなの?』
瑛はあえて土方と視線を合わせずに、天井を見続けた
『あっ。天井の人が帰ってきた』
「おい!何か言いたいことがあるんだろ?」
『見張っていたことバレていんだ… ?』
「ゆっくりでいいから!話してくれ!」
『ゆっくりでいいと言いつつ急かしてない?なんだろう…ここにきてから、止まっていた思考が回復したみたい。』
土方は、瑛の頭を撫でる
無表情、無反応で天井を見続ける瑛を愛おしく見つめる
『なにが目的なんだろう…昨夜も抱きしめるだけだった。新選組は男所帯だと、山南さんが言ってた。なのにここにきてから、暴力も犯されることもない。…怖い』
土方の手から逃げるように布団の中へ潜り込む
小刻みに震える布団をトントンとあやすようにし、言った
「安心しな! 俺たちがお前を守ってやるからな!!」
『マモル?なぜ?』