夢幻泡影
「逃げられたか… 」

「瑛の話、聞かなかったんですか?」


山崎が土方に問う


「自分が長州の者という以外、話さなかったんだ」


「瑛が長州の者というのは、瑛を買った奴が長州の吉田 稔麿という意味です。先日、立ち聞きしたようです」


近「松平様と売買のことを口にしていたな」

烝「はい。松平様に売られたと言っていました。考えにくいことですが、瑛は嘘を言ってるように見えませんでした」

土「じゃあなんで旅籠に?」

烝「俺と一緒に忍び込んだんです」


!!!!!!!


沖「山崎くん、一緒だったの?」

永「何でいわねぇんだよ!!」

烝「言えなかったでしょ…」

土「すまねぇ。俺が頭ごなしに疑ったから」

烝「これ。吉田からの手紙です。瑛が取ってきたんです。
それと、俺達は尾形に聞いて間者の疑いがかかっていることは、覚悟していました」


原「手紙があるなら、早くだせよ!!」


烝「信じてもらえなかったら、出すって段取りだったんです。まさか…出て行くと思ってなかったので!!」

土「俺が〝チユリ〟と呼んだからか…」

藤「そのチユリって?」

土「松平様が瑛を見て、呟いたんだ」

近「俺は聞こえてなかったな」

沖「地獄耳だからね」

土「うるせぇ!俺は隣にいたんだ!」

山「チユリというのは瑛の本名かなぁ?」

土「わからねぇ。明日、松平様の所へ行こう。吉田のこともききてぇしな」



近「よし! お開きにする!!」
< 65 / 98 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop