夢幻泡影


その頃

瑛はというと


圭尚を逃がしたことがバレて殴る蹴る

の暴力振るわれていた

ドカッ ドスッ

圭尚の無事を祈っていた


「それくらいにしとけ!
手を出すなと言っただろう!!
逃げられたのも、ちゃんと見張ってないからだ!!馬鹿者!!」


ゲホッ はぁはぁ…


瑛は血を吐いた


「チッ!水を持ってこい!」


頭から、水をかけられる


「たくっ!何だってこんな血が欲しいのか!吉田様の気まぐれで何人死んだか」

「はあ…勝手に使うからだろ?…はあ」

「お前が使い方を言わないからだろ!」

「買った人にしか教えない!」

ドカッ

「フン!強情な奴だ!」


バタン


再び蔵にひとり

ゲホッ ゲホッ ゲホッ


意識が遠のく

数刻後
ギィーーーー

蔵に入って来た男を見て、目を開いた

「瑛……久しぶり」 ニコッ


「栄太郎…?」

瑛の縄を解いていく

「吉田 稔麿に改名したんだよ」


「あたしを買ったの?」


「そうだよ…
こんなことになっているとは
知らなかったけどね」


濡れることを気にせず、瑛を抱きしめる



「やっと、会えたね!会いたかったよ!」



栄太郎こと吉田 稔麿は、兄の友達

一度しか顔を合わせていないが

〝栄太郎が瑛を嫁に貰いたがっている〟と

兄、翔から聞いていた


「ふざけないで…あたしは……」


言い掛けたが、吉田に立たされる

「歩けるかい?」

不気味な優しさに戸惑いながら、蔵を出る







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