夢幻泡影
そして、その日は来た

「稔!気をつけて!」

「ああ!瑛も気をつけて!!」

ニコリと笑顔を交わし、別々の方向へ



新選組の屯所を目指す


チラリと後ろを振り返る


黒い煙が上がっていた


『早く、稔のところへ戻らなければ!!』


瑛は、走った


昼間だから、なるべく人目につかないように、人通りの少ない道を選んだ


新選組へ忍び込む

近藤も土方も、いなかった

「山南さん!」

「瑛!?」

「時間ないので、手短にお伝えします!
桝屋をお調べ下さい!
長州の者に、何か企みがあるようです!
それと、あたしのことは心配いりません!
大事にされていますので…

山南さん…圭尚のことは……?」

「会うかい?」

「やっぱり、ここにいるのね?
時間がないので…」

「瑛?戻らなければいけないのかい?」

「あたしを待ってくれているから」

「吉田 稔麿…」

「そう!稔が新選組へ知らせに行くことを許してくれたの!帰らないと!!」

「吉田は、どうして?」

「長州の計画を止めたいって…
あたしを利用させないように、命をかけてくれているの!ごめんなさい!もう、いくね!?」


もっと話をしたかったが、吉田の許へ

早く戻って、吉田を安心させたい

瑛は、吉田の為に立ち上がった


「山南さん…
今回の件が無事に済んだら
稔と夫婦になります!
どこか遠くで2人で暮らします!

お元気で……さよなら」


瑛は、新選組を出た


自分の意思で


吉田についていくことを告げた


『今度こそ、もう会えなくなる…』


吉田の許へ走る間、涙が溢れた


その理由が瑛には判らなかった





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