夢幻泡影
火事の現場に土方がきていた

吉田の姿を見つけ、声を掛けようと近づいた

その時、瑛が吉田の許へ戻った

「稔!!」

瑛の呼ぶ声に振り返った吉田

「瑛!!おかえり!!」

微笑み合う

二人の死角に土方がいた

同じ〝トシ〟という名で吉田を呼んだ

土方は張り裂けそうな胸の痛みを

どうにか治めようと、二人から逃げた


『なにしてんだ…俺…』



「歳!!どうした?」

「何でもねぇよ」


近藤に心配され、どうにか冷静になる


「顔色が悪いぞ?」

「大したことはねぇ、煙を吸ったんだ…」

「そうか…」


付き合いが長いから、近藤はこれ以上聞いても無駄だとわかっている


嘘だとわかりつつ、横目で顔色を見る




隊士達を連れて屯所に戻ると

山南によって、幹部と圭尚が集められた


山「先ほど、瑛がきていた」

近「なんだって!?」

原「それで?瑛は?」

圭「瑛はここに?」

山「まあまあ、落ち着いて…
瑛は、吉田と共にあるそうです
大事にされているようだから
心配しないでほしいと…
ここへは、吉田の許しを得て密告に
きたんだ…
松平様が京を離れたら、長州が動くと
吉田はそれを止めさせたいらしい
瑛を利用して朝廷を動かすとか
武力行使とか、計画がはっきりと
わからないらしい
ただ、〝桝屋〟を調べてほしいと」

永「馬具とかの桝屋か?」

山「うん…そう言っていたよ」

沖「罠かもしれないよ?」

藤「うん!瑛が吉田に騙されているかも」

原「だが、調べてみる価値はある」

土「ああ。調べて何も出なけりゃそれまでさ…
山崎!聞いているか?」


烝「はい」


土「聞いての通りだ!任せた!」


烝「御意!!」


圭「瑛は、吉田と契約を切ると言っていたのに
どうして、吉田のもとに…」


土「瑛を町で見た…
吉田を慕っていたよ!
笑っていた…」


山南は、夫婦になる話をふせていた
土方が瑛を想う気持ちを知っていた
そして、瑛も土方を今も想っていると
吉田のことを話す時、瑛は心から笑っていなかった

土方が誤解しているが

瑛が女として、生きる道を選んだ
本人の意思なら、邪魔だて出来ない

新選組は、いつも危険がついて回る

これでいいのか

答えの出ないまま

この場を解散した

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