夢幻泡影
「瑛?綺麗な簪だね?よく似合っている」

吉田がふわりと笑う

つられ、瑛も笑う

「お友達のお千さんから貰ったの!
置いて来たんだけど、先ほど渡されたの」

「そうか!良かったね!
お千さんにお別れ言わなくていいかい?」

「亡くなっているの…」

「そうか… すまない…」

吉田が瑛を抱きしめる

「稔、いいのよ!気にしないで!!」




昼過ぎ



「瑛、桝屋が捕縛されたよ!
瑛の情報が役に立ったね!」

「稔……
稔にとっては、仲間の人でしょ?
よかったの?」

「桝屋はね、古高っていうんだけど
口のかたい男だよ
新選組が、はかせることが出来たなら
それでいい
はかなければ、こちらで計画を調べて
密告するまで……
とっくに覚悟決めているさ
瑛、お前を巻き込んで、悪いね…」

「稔についていくと、あたしも覚悟決めているのよ!」

「フッ。頼もしいな…
ところで、瑛が捕まえられた時
一緒にいた僧侶はどうしてる?」

「新選組にいるみたい…どうして?」

「いや……気になってな…どんな人?」

「圭尚は、お母さんを買った人
お母さんが結婚するまで、一緒に旅をしていたそうよ?
あたしの血の使い方を知ってたわ!」

「どうして!?」

「あたしが怪我をしたとき、あたしの血で怪我を治してくれたの」

「そんなことできるのか?」

「あたしも知らなかった
圭尚は、あたしとお母さんを間違って…」

「その圭尚、怪しいと思ったことは?」

「え?助けてくれたんだよ?」

「瑛…翔から貰った文だ」

「兄上から?」

〝 栄太郎

瑛を買って欲しい

瑛が危ない 翔 〟

「この文を受け取りすぐに瑛を捜した
皆、殺された後で
瑛をみつけられなくて
こんなに時間が掛かってしまった
やっとみつけて瑛を買うことが出来た
松平 春嶽 様とは、朝廷の仲介者として会った
瑛をよろしくと言われた
大事にされていたようで、安心したよ
京について、籠を開けたら
瑛がいなかったと聞いて、驚いたよ
松平 春嶽 様も驚いていたから
籠がすり替えられたと、わかったが
恩師がいざこざあって
俺も、京になかなか入れなくて…
瑛が辛い時に、そばにいられず、すまない
だが、瑛を横取りしようとした奴がいるんだ
それが、その圭尚ではないかと思っている」


「そんな……」


「ごめん…辛いことだよな?」


「でも、圭尚も捕まったのよ?」


「新選組に入り込む為だとしたら?」

「え?」

「もしかしたら、瑛を利用して武力行使
しようと、長州の者に持ちかけたのが
圭尚で、使い方がわからないから
朝廷との取り引きに使えないだろ?
それで酷いことしたのでは?
わざと瑛と使って、新選組に入ったのは
新選組が血の使い方を知っているか
確かめる為だとしたら」

「…」

「瑛は、お母さんの使い方と同じ?」

「違う…」

「教えてないよね?」

「うん」

「よかった!!瑛、もう血は使うな!
誰にも、知られてはいけない!
もしも、俺が大怪我したって使うな!
いいね?」

「そんな…稔の為なら!」

「その気持ちだけで、十分さ!」



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