骨による骨のための狂想曲
激しくあたしを抱いた彼は、シャワーも浴びずにベッドに沈んでいる。
寝顔が思いのほか幼く、愛らしい。
「ね、起きて……」
揺すったりキスをしたり乗っかったり咥えたりしてみるが、彼が目覚める気配はない。
あたしは、自分の唇が喜びで綻ぶのを自覚した。
「ま、当然よね……この香水とルージュには、特殊な睡眠薬と媚薬が使ってあるもの」
ここからが、あたしのお楽しみだ。
まず、彼の首筋に噛み付いて——犬歯を突き立てる。痛みで覚醒し、暴れる彼を全身で押さえつけたまま、血を飲む。
「ああ、甘くておいしい……」
ワインなんかと比べ物にならないくらい、病み付きになる。
ゆっくり時間をかけて血を全部抜く。ある程度吸ってしまえば動かなくなるので、そこから先は結構簡単だ。
そして、お風呂場へ引き摺って行き、愛用の「のこぎり」を取り出す。
「うん、程よい筋肉ね。美味しそう……」
ビニールシートを広げて、ゴリゴリ、と、解体する。クリスマスに似つかわしくない音だと、毎年思っている。
「今年の男は……焼いて食べるのが一番かしらね?」
去年の男は全体に脂身が多かったため、野菜が欲しくなった。
その前の男はパサパサであまり美味しくなかったが、目玉と脳みそは美味だった。
あたしの料理の腕前も、年々上がっているので問題はない。
解体した彼を、地下の、特別な調理器具で料理する。
「サンタさん、頂きます」
口の中に甘い彼の香りが広がり、ぞくぞくする。全身を悦楽が走るというのは、たぶんこのこと。
「あぁ……」
サンタさんを食べながら、彼に「食べられた」時のことを思う。なんという快感、なんという幸せ。
「め、メリー……クリスマス……!」
視界の端に、彼に着せていた赤いサンタの服がうつる。それがまた妙に劣情を煽り、ついにあたしの意識が爆ぜた。
彼を食べるだけで絶頂に達するのだ。他に男はいらない。