骨による骨のための狂想曲
出会いは、すぐにやってきた。
スイートバレンタインを過ごしませんか、鍋パーティーしませんか、って書いたら、直ぐだった。
出会い系サイトで捕まえた男は、その日のうちにあたしの家に来たがった。
「いいよー!」
もとよりそのつもり、あたしは二つ返事で男を自宅に招いた。
その男の希望で、今日はナースのコスプレ。既に男の鼻息は荒い。はぁはぁと、今にも飛びかかってきそう。
「そ、そんなに慌てないでよ、落ち着こう?」
これはあたしの本音だったりするんだけど、男には通じない。
「だって、ナース、んふふ……」
「や、まって、慌てすぎ……」
「いやいや、嬉しいなぁ、看護師さんにぼくの童貞をあげられるなんて……ああ、夢みたいだ」
ナース服が乱されて、あっという間に裸に剥かれた。あたしの体中を這いまわる手は、愛情の欠片もない。
己の欲を満たすことしか考えてない。ブラジャーを乱暴にむしり取って、胸にむしゃぶりつく。ちゅぱちゅぱと音が響いて、あたしはちっとも気持ちよくない。
その調子で、パンティーもはぎ取られた。濡れていないところにイキナリ押し込もうとしたのはさすがに止めたけど、あとは好きにさせる。
せっかちで自己中な挙動に若干……というか、嫌悪感しか覚えないけれど、とにかくこの男の「肉」が美味しそうだから、我慢する。
もちろん、それを気取られないよう、時折「あんっ」とか「やあっ……んっ……」とか、演技をするのも忘れない。幸いなことにこの童貞クンは、あたしの喘ぎが本物なのか演技なのか、区別がつかないらしい。
「んふっ……ちょっぴりチクッとしますよぉ」
おもちゃの注射器——と見せかけて、ホンモノだ——を、男の首筋に突き立てる。
「んっ?」
「本物みたいでしょ?」
「ま、まって、それってドコで……」
気にしない気にしないと言いながら濃厚なキスをして、相手の意識をあたしに引きつける。舌を絡めて口腔内をせめているうちに、男は、すとん、と眠ってしまった。
なにせ、さっき打ったものは、ネットで入手した強烈な睡眠薬。
「ね、起きて……」
揺すったり叩いたり吸い付いたりしてみるが、起きる気配はない。
あたしは、ベッドから静かに降りて、隣の部屋のドアを開けた。そこには、骸骨の彼がいる。
「おまたせ」
「俺、あんな男の肉を、食べるのかよぉ……」
「そうよ?」