【完】千鳥の舞う花火。
千鳥は「やった!」なんて言って喜ぶ。
体を屈めてタンポポの背丈に合わし、細く口をすぼめた。
固く尖んがる唇に、ほんの少しだけ男としての欲が湧く。
それをごまかすのに、慌てて俺は口を開いた。
「べ、別に千鳥が体を屈めなくても、持って吹けば良いじゃねえか。」
何気なく、恥ずかしさをごまかす為に言った言葉。
その言葉を聞いた千鳥は直ぐ様に顔を歪めて……。
「……花にも、命はあるんだよ。」
……たった、一言。
ふーー……っと、長い息でタンポポを吹いた。
千鳥の吐息によって飛ばされたタンポポの種は、風に乗ってどこかへ飛んでいく。