【完】千鳥の舞う花火。
この日俺達は、千鳥を連れて病院の中庭で遊んだ。
体調の良い千鳥と、まるで小さな子供のように鬼ごっこ。
そこまで広くない中庭を駆け回る千鳥の表情が、本当に煌めいていた。
その笑顔を忘れないように、俺は必死に脳内へ記憶する。
千鳥が生きているという幸せ。
……手放すのが、怖い。
「昴タッチー! 次は昴が鬼ー!」
今平然と笑っている千鳥は、俺以上に死を恐怖としている。
泣き虫なくせに、いっちょ前にそれを隠そうとして。
「っ、待てーー! 千鳥ーーっ!」
唇を噛み締め、涙が零れそうなのを我慢して同じように中庭を走った。
百合がジッと、こっちを見ていることにも気づかずに。