【完】千鳥の舞う花火。








そう言って微笑んだ百合の目は、今にも涙を溜めて泣きそう。



三年間、ずっと一緒にいたんだ。


それぐらいわかる。




追いかけようとした。



手を伸ばせば、百合の手を掴めた。





だけど、無理だった。





「行かないで! 昴!!」





千鳥の声が、耳について。





「お願い、昴……行かないで……。」




背中から聞こえる泣き声。




もし百合と千鳥の立場が真逆だったら、俺は迷わず千鳥を追いかけていただろう。



病気で入院しているのが千鳥で、今走っていたのが百合だから。


俺は、追いかけられない。





千鳥が、好きだから。








< 71 / 121 >

この作品をシェア

pagetop