【完】千鳥の舞う花火。
そう言って微笑んだ百合の目は、今にも涙を溜めて泣きそう。
三年間、ずっと一緒にいたんだ。
それぐらいわかる。
追いかけようとした。
手を伸ばせば、百合の手を掴めた。
だけど、無理だった。
「行かないで! 昴!!」
千鳥の声が、耳について。
「お願い、昴……行かないで……。」
背中から聞こえる泣き声。
もし百合と千鳥の立場が真逆だったら、俺は迷わず千鳥を追いかけていただろう。
病気で入院しているのが千鳥で、今走っていたのが百合だから。
俺は、追いかけられない。
千鳥が、好きだから。