【完】千鳥の舞う花火。
病室の扉は開きっ放し。
この病室は端にあって、扉を開けば真っ直ぐにエレベーターまでの道が続いている。
百合は直ぐ十字路に差し掛かって、右へと曲がって見えなくなった。
「千鳥……。」
「昴、昴……っ。あたしを、一人にしないで……!」
振り向けば、五年前の日のように千鳥が泣いていて。
涙を流して何度も「行かないで。」と繰り返す千鳥を、強く抱きしめた。
「大丈夫、ちゃんといるから……。千鳥を一人になんて、しないから……。」
軽い過呼吸までも起こしていて、今離れたらダメだと思った。
百合は大事な仲間の一員。
だけど、今千鳥の傍を離れてしまえば、きっと千鳥はまたパニックを起こす……。