肉食系赤ずきん―彼女は獲物を捉える―
トントン、戸を叩く音が聞こえて狼さんは素早くベッドに潜り込みます。
「は、はい、どなた?」
「おばあさん、赤ずきんよ。お菓子と葡萄酒を持ってきたの」
「入っておいで」
キィと扉が開く音、その後にパタンと閉まる音がしました。それを耳にして狼さんは内心ドキドキです。
一歩一歩赤ずきんちゃんが近付く気配がします。おばあさんに成りかわった狼さんは最早心臓が壊れそうでした。
「……あら?」
赤ずきんちゃんは何かに気付いたように不思議そうな声をあげます。
「おばあさん、なんて大きなお耳」
「っ、そ、それはお前の声がよく聞こえるように…」
「なんて大きなおめめ」
「そ、それは…、ぁ、お前がよく見えるようにさ!」
「なんて大きなおてて」
「ぅ…、それはお前を捕まえられるように…」
若干詰まりながらもしっかりと答える狼さんに赤ずきんちゃんは吹き出しそうになりますが、そこは耐えます。
「なんて大きなお口」
「……それは、お前を食べちゃうためさっ!」
ガバッと起き上がった狼さんは赤ずきんちゃんに襲いかかります。
赤ずきんちゃんが食べられてしまうと思われたその時、ニィと妖しげに唇を歪めた彼女は両手を押さえつけキラリと光る銃口を狼さんに向けました。
その出来事を理解した狼さんは悲鳴をあげ、ガタガタと怯えはじめます。