透明な海~恋と夕焼けと~
今日の放課後、失恋したばかりだというのに。
何であたし、出会って間もない仁科さんにドキッとしているの?
あたし……もう傷つきたくないから、恋なんてしたくないのに。
「雨があがるまでいて良いよ。
何か欲しいものがあったら言ってね」
リビングにある大きな窓を見ながら、仁科さんが呟く。
何故か哀しげに外を眺める仁科さんの視線を追うと、雨がどしゃ降りと言う言葉が似合うぐらい激しく振っていた。
雨があがるまで、時間がかかりそうだ……。
「…その前に、家の鍵がないって言っていたっけ?」
「あ、はい」
そうだ。
雨以前の問題だったんだ。
「じゃ、今日僕の家に泊まる?」
「えっ!?」
「…さすがに嫌だよね。
悪いね、変な誘いをしちゃって」
「い、嫌じゃないです……」
「えっ!?」
さっきのあたしと同じ反応をするから。
思わず吹き出して、あたしは笑った。
仁科さんは、恥ずかしそうに髪をいじった。
髪の毛いじるの、癖なのかな……?