透明な海~恋と夕焼けと~
「美音ちゃんは何か部活はいっているの?」
「え?
…もう辞めちゃいましたけど、美術部にはいっていました」
「美術部かぁ。
じゃあ、絵とか得意なのかな?」
「得意と言うか…描くのは好きですね」
描くのは好き。
それは間違っていない。
だけど、美術部に入ったのは、基樹がいたから。
付き合っていない頃、基樹に近づきたくて入った部活。
まぁ別れて、学校出る前に退部届出したけどね。
基樹目的で入った部活だもの。
知り合いなんていなかったし。
先生も何も言わないで認めてくれたしね。
そういえばあたし、人見知りなのに。
初対面の人の前では何も言えずに固まってしまうのに。
…何で仁科さんの前では、こんなに話せるんだろう?
…きっと、そうだ。
仁科さんの優しい笑顔に、あたしの心が許したんだ。
仁科さんの笑顔…どこか基樹に似ているから。
基樹に似た、あったかい笑顔。
仁科さんの笑顔が、どこか似ているんだ。
「……美音ちゃん?」
あたしはいつの間にか、泣いていた。